顎関節症の治療: (保険診療で診察し、費用のかかるマウスピース、初期治療ガイドラインで推奨されていない噛み合わせ治療は基本的にいたしません。また、開口障害などの症状は早期治療により改善が見込まれます。)

 「あごの痛み」に対して投薬による治療、リハビリテーション、日常生活指導などをおこないます。(初期治療のガイドラインに従い噛み合わせをいじることは一切いたしません。またマウスピース治療も基本的に行いません)顎関節症は医師・歯科医師の間でも複雑で分かりにくい疾患と認識されているものもあります。そのため、以前から顎関節症は医科、歯科の境界疾患であることから、医学部の病院歯科・口腔外科が中心に診察し、関節炎・頭痛・生活習慣などの総合的な判断が必要になります。 肩こり、顎関節痛(開口時・咀嚼時)、頭痛(側頭筋痛)、顎のカクカクする音(クリック音)などの複合的な 症状でお困りの方は、是非ご相談して下さい。

 「あごが痛い」「口が開かない」「カクカク音がして痛い」患者様へ

顎関節の自己チェック法

(合計が8.6以上で顎関節症と診断)

  1. 口を大きく開いたとき,人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入りますか?
    (1.すっと入る 2.ほぼ問題ない 3.どちらともいえない 4.やや困難 5.全く入らない)
  2. 口を大きく開け閉めした時,あごの痛みがありますか?
    (1.全くない 2.たまにある 3.どちらともいえない 4.しばしばある 5.いつもある)
  3. 口を大きく開いたとき,まっすぐに開きますか?
    (1.いつもまっすぐ 2.たまに曲がる 3.どちらともいえない 4.しばしば曲がる 5.いつも曲がる)
  4. 干し肉,するめ,タコなど硬いものを食べるとあごや顔が痛みますか?
    (1.痛まない 2.たまに痛む 3.どちらともいえない 4.しばしば痛む 5.いつも痛む)

顎関節症の代表的な症状は,「あごが痛む(顎関節痛)」,「口が開かない(開口障害)」.「あごを動かすと音がする(顎関節雑音)」の三つで,このうち一つ以上の症状があり,鑑別診断で他の疾患がない病態を「顎関節症」といいます.  顎関節は手足の関節と同じような基本構造を持っていますが,異なる面も多くあります.顎関節は頭の骨(側頭骨)のくぼみ(下顎窩)に下あごの上先端の骨(下顎頭)が入り込む構造で,その間にクッションの役割をする関節円板という組織が挟み込まれています。口を開くときは,下あごが関節のへこみ(下顎窩)からはずれるように前に動くのですが,下あごの上に帽子のようにのっていて,クッションの役目を果たしている関節円板も連動して動きます.これが何らかの原因で前にズレたままになると,開閉口のたびに円板が引っかかったり,こすれて内張りのやわらかい組織(滑膜)の炎症を起こします.軽いものでは,咀嚼(そしゃく)筋の痛みや関節を包んでいる袋,あごの動きを調整するじん帯の炎症だけのケースもありますが,受診者の7割近くに関節円板のズレがみられます.関節円板のズレを簡単かつ明確に診断するにはMRI検査が最適です.閉口時に関節円板にズレがあっても,最大開口時にはこのズレが戻る場合と,戻らない場合とがあります.戻る場合には開口時と閉口時に「カックン」と関節音がします.また,戻らない場合には,急性期には「口が開けられない」,「口を開けると耳の前が,とても痛い」などの症状がみられます。多くは保存的治療で対処しますが,症状によっては外科的な治療を行う場合も希にあります. 通常は鎮痛薬の規則的な服用で,関節内の炎症を鎮めるとともに,スプリントといわれる,マウスピースを歯列全体にかぶせる保存的な治療が一般的です.スプリントは,噛みしめ時の顎関節の負担を軽くする治療法です.これで痛みが軽快しない時は,関節の中に局所麻酔をして,徒手的にズレた関節円板を治したり,また炎症がひどいときは,点滴注射で関節の中を洗い,潤滑剤を注入することもあります.このほか,皮膚を介した電気刺激や自分の手で筋肉をマッサージしたり,温湿布で血行をよくするなどの理学療法も効果的です.また,円板が癒着して関節の中で動かなくなった場合,病院歯科では,入院下に円板を切り離す手術もありますが,関節付近に小さな穴を開けるだけで済む内視鏡手術が主流です. 上記の治療は病院歯科で一般的に行われますが,ご自身での注意も必要になります.一番大切なことはアゴの関節に負担をかけないことです.うつぶせ寝,睡眠不足,フランスパン,ビーフジャーキー,タコ,イカなどの硬い食品や大きな食品を避ける,歯を噛みしめる癖,あごを後ろに引く動きが必要なフルートやサキソホンなどの管楽器の演奏,顎で楽器を挟むバイオリン演奏,格闘技やスキューバダイビングなどは控えることが大事です.さらに筋肉のマッサージは自宅でもできます.直接あごに負担のかからない生活を心がけましょう。(初期治療のガイドラインに従い、噛み合わせ治療は行いません)